
「あるミニマリストの物語」ジョシュア・フィールズ・ミルバーン+ライアン・ニコデマス著を読みました。
次々と出世の階段を登り、多くの高価な物質に囲まれ、世間からみれば典型的な勝ち組と思われるような生活をしていた著者が自身の離婚、母の死に直面し、ミニマリストへ意識や価値観を変えていく物語です。
今回は「あるミニマリストの物語」のレビューと感想を紹介したいと思います。
「あるミニマリストの物語」の感想
ミニマリストを目指す本、片付けの本など様々なミニマリスト関連の本が日本でも出版されています。私自身もミニマリストに憧れていることもあり、何冊も関連書籍を読みました。
この「あるミニマリストの物語」は物語、小説の形式で書かれている本です。以前読んだ「ぼくはお金を使わずに生きることにした
」の本も物語形式でした。海外では物語形式の本が一般的なのかなとも感じます。
https://naturamor.net/2016/08/08/post-1722/
物語形式の良さはまるで映画を見ているように物語の世界に入りやすいということです。頭で考える必要はなく、ただただ主人公の体験を通して主人公の気持ちを感じ取ることができます。
特に「あるミニマリストの物語」の本では、ほぼノンフィクションで物語が書かれているので臨場感があります。
実際に著者が物質主義の世の中や自分の生活に疑問を感じ始め、「自分が本当に求めているのは、この物質なのだろうか?こういう生活なのだろうか?」と考え始めるところなどは、すごく共感ができます。
なんとなく世間で言われている夢、世間で良いと言われる価値観、マスメディアの広告に影響されているだけで「本当の自分は興味がないもの」をひたすら集め、安心感を得ようとしているのではないか、と私自身感じることが多かったからです。
物語を読む中で、著者の心の変化に自分自身を重ね合わせてしまう場面が度々ありました。
「あるミニマリストの物語」で心に残った言葉
「あるミニマリスト」を読んで心に残った言葉をいくつか紹介したいと思います。
「今では、お金を使う前に『これには僕の自由を消費する価値があるだろうか?』と自問するようになった。例えば、『このコーヒーには僕が自由を犠牲にして手に入れた2ドルを使うだけの価値があるだろうか?』・・・中略・・・言い換えるなら、『今から買おうとしている物から得られる価値と、僕の自由の価値は、どちらが大きいだろうか?』ということ」
(「あるミニマリストの物語
」P.166より引用)
著者は常に物を買うときに自分へ問いかけるようになったそうです。この問いかけはすごく面白い問いかけだと感じました。
必要のない収入を必要と思う気持ちを捨てて、ライフスタイルを物質主義的な品物ではなく、経験を中心とした物へと移行することさえできれば、満たされた生活を送るために必要なお金はずっと少なくなることに気づいたのはミニマリズムのおかげだ。必要なもの(家賃、光熱費、食費、保険料、貯金)を払うのに十分な金額さえ稼げれば、他の方向に幸せを求めることができる。
(「あるミニマリストの物語
」P.200より引用)
これは私自身にも身に覚えがあります。どんなに高いものを手に入れても、すぐに満足感や達成感は消えます。しかしお金がかかったかからないに関わらず、自分が興味を持って体験したことはすごく満足感や幸福感、達成感を与えてくれるし、記憶に残るのです。
「達成」と「生産性のある結果」を目指す堅苦しい生活を捨ててみた。
ゴールなしで生活をしてみて、少なくとも3つの側面が変化している。
1、ストレスが減ったこと
2、生産性が上がったこと
3、ずっとハッピーになったこと(「あるミニマリストの物語
」P.224−225より引用)
これは目からウロコの考え方でした。人生において自分の夢や目標を定めて努力をする、そのためにゴールを定めて生活することが当たり前だと思っていました。ゴールが定めなければダラダラしてしまい、進化できないと考えていたからです。
一方著者は世の中であたりまえに思われている「ゴールを設定する」ということを捨てた結果、生産性が上がったと言っているのです。
これはすごく不思議ですし、私自身の想像とは180度違うものでした。
ミニマリストを知ることは物欲主義を考え直す良い機会
日本でも「ミニマリスト」ブームが巻き起こり、何も持たずに何もない部屋で生活している人々がクローズアップされました。
ミニマリストに自分自身がなるかならないかは置いておいて、「ミニマリスト」を知るということは、価値の高いものをたくさん持っている方が幸せだという物欲主義的な考え方を見直す良い機会だと思います。
物欲主義は悪いことだとは思いません。人間に欲求があることは当り前ですし、それが物に向かうのは特別変なことだとも思いません。
ただ今自分が求めているものが、本当に自分自身が心の底から欲しいものなのかということを問いかけるには「ミニマリスト」の考え方が良い刺激になると思うのです。
そういう意味で「あるミニマリストの物語」の本で、ミニマリストへと変化していった著者の心の変化、生活の変化を疑似体験するのはすごく面白いと思いました。
あるミニマリストの物語―僕が余分なものを捨て人生を取り戻すまで